皆さま、ご機嫌いかがですか?砂山(@sunayama373)です。
今回は、2020年2月に名古屋御園座で上演された宝塚歌劇月組公演「赤と黒」の感想をまとめていきたいと思います。
初めて行く劇場でしたが、劇場自体の雰囲気も素晴らしくて、中日劇場なき後名古屋で宝塚歌劇定期公演をするのにうってつけの小屋だなと感じました!
さらに演目は柴田侑宏先生の「赤と黒」ということで、かなり期待していきましたが、柴田ワールド炸裂で期待通りの公演!
では感想をまとめていきましょう。
月組「赤と黒」の感想
個人的に柴田先生の作品めちゃくちゃ好きなんですよね。
現実的には絶対に起こしてはならない恋や抱くことが難しい野心にトランスできるから、観劇していてめちゃくちゃ気持ちいいんですよ。
疑似体験というか、VR感あります
柴田先生についてはこちらの記事にもまとめてありますのでよかったら読んでみてください。
今回は「赤と黒」はお恥ずかしながら原作も不勉強であらすじも何も予習せずに観劇しましたが、それでもかなりのめり込んで観てしまいました。
特に魅力的に感じた登場人物別に感想をまとめていきたいと思います。
真面目・野心家・情熱的なジュリアンが珠城りょうにぴったり
珠城りょう=真面目みたいなイメージはもともと持っていましたが、今作のジュリアンのような真面目な上に野心家で情熱的な人物像がめちゃくちゃ似合いますね…!
「馬鹿にしたやつ全員殺す」みたいな危うい思考を兼ね備えているのも良い。危うさって魅力ですよね。
ジュリアンは私たちが普段あまりさらけ出さない野心とか情熱とかに忠実に生きている感じがしてすごく魅力的な人物だなって感じました。本当はそうありたいと思っていても、なかなかあそこまで忠実に生きられないみたいなとこ、誰しもあると思うんですよね。私はあります。
そんな生き方を舞台上で体現してくれて、観ている側にトランスさせるのがまさに柴田作品。好き。
たまきちは、宝塚古典ジャンルあまり強くないのかなと、ちょっとだけ思いました。現代劇の方がなんかしっくりくるなぁ
人妻を演じる美園さくらがめっちゃいい
個人的には今回の「赤と黒」MVPは美園さくらちゃんです。
人妻最高でした。
美園さくらちゃんって、比較的若めの役が多いというか、結構キャピキャピしているイメージがあったんですけど、今回の人妻の落ち着いた感じや恋に溺れていく感じが非常に色っぽく魅力的でしたね…!
私のめちゃくちゃ好きな娘役さんである星奈優里さんを彷彿とさせる大人の女でした…!
トップ娘役なのに2幕の出番がほとんどないのは残念ですが、夫人が最後までジュリアンを想い続けていてくれたのはこの作品においてもめっちゃ救いになっているような気がします。
それにしても色気がすごかった。。。美園さくらちゃんってこんな感じだっけ?って何回も思ったよね…!
いいヤツフーケとコラゾフ侯爵の2役演じ分けがすごい月城かなと
まず月城かなとの演じ分けが的確すぎてうまい!!
声とか見た目とか極端に変えている訳ではないのに、似てる人とかいう設定もないのに完全に別人として存在感があった。
これは宝塚初めて見る人は、同じ役者が演じているって気がつかないんじゃないだろうか…?
それって地味にすごいことだと思うんですよね。
れいこちゃんってそんなお芝居上手かったっけ?って思ってしまった。
いや、上手くないとできないことだから、うまいんです。素晴らしい。
89年の月組公演では天海祐希がフーケ役で久世星佳がコラゾフ侯爵役で、別々だったんですね。
89年の公演は劇場もバウホールだし、出番ももっと違ったかもしれませんが、確かに2人の役者でやるには少し1人あたりの出番は少ないような気がしますから、今回れいこちゃんが的確に演じ分けて2役演じたのはよかったですね。
わかってたけどやっぱり輝月ゆうまの歌唱力がすごい
わかってたけど、まゆぽん歌うますぎる…!
あの町長の歌はなんだ…!めちゃくちゃ難しそうな歌!
なんというかセリフと音楽の音階に差がほとんどなく、どこからが歌でどこからがセリフか曖昧な曲だったんですけど、ミュージカル特有の「急に歌い出した感」を全く感じさせない!
観ている側としてもセリフよりもスッと聞き取れて、それでいて町長の少しコミカルな焦りも表現されている。
しかも舞台上には町長1人だけ。1人だけであの町長の歌だけで舞台を成立させているのはほんまにすごい!!!
感動した。
赤と黒は結末に救いがない…!?(ネタバレ)
ジュリアンは結果的に貴族に怪我を負わせた罪で殺人罪と同罪になり処刑されてしましますが、自分が納得するように生きたことに後悔はないと言います。
見方によれば、自分の野心のために女性を誘惑して出世のために行動を選択してきたジュリアンの身勝手が引き起こした救いのない末路とも思えますが、それでも最後まで2人の女性に愛されながら死に向かうことができたのは、ジュリアンが出世のためだけではなく、2人の女性を心から愛した結果であるとも言えます。
レナール夫人が最後までジュリアンを想っていたのも、自尊心を傷つけあいながらもマチルドが最後までジュリアンの妻として居ることも、ジュリアンという人間に惹かれている証であり、そこに愛がある。
作品の冒頭でも「愛のうちに死ぬ」と言っていたのが最後の最後にやっと理解できた感じがしました。
たまに「柴田作品は男のエゴが酷くてあまり好きじゃない」のような意見も目にすることがありますが、今作は「女のエゴ」も同じくらい表現されているので、その辺りは相殺されているのかなと感じました。
意外にも客席降りあり!
「赤と黒」はシリアスな一本物のイメージがあったので、お芝居が終わった後のフィナーレもシックな感じになるのかなと思っていたのですが、意外にも客席降りがありました。
しかも男役が黒燕尾で降りてきてくれるのって結構貴重だなって想います。
確かに御園座で宝塚歌劇を上演するのは初めてだし、本拠地宝塚からは少し離れていることもあり、御園座で初めて宝塚を観劇するって方も多いだろうから、間近でタカラジェンヌが見れる客席降りがあると嬉しいですよね…!
中村暁先生のそういう優しさ、好き。
御園座が楽しすぎた!
御園座には初めて行きました。雰囲気は博多座に近く、歌舞伎を上演する劇場特有の和テイストな雰囲気と劇場全体がお祭りみたいな感じがあってとても楽しかったですね。
ロビーとかホワイエで色々お店が出てるのって、歌舞伎の劇場特有な印象があり、めっちゃ好きです。
格式高いけど、娯楽の要素もしっかりあり、雑多な日常から3時間だけ切り離してくれる劇場って感じでした。
赤と黒上演期間限定の薔薇の最中アイスいただきました。めっちゃ薔薇だった!
おわりに
柴田先生は昨年逝去されましたが、作品は今後も宝塚の古典作品としてずっと受け継がれてほしいですね。
最近は若手演出家の新進気鋭な作品も多く、宝塚の作品も時代とともに変化していっている感じはありますが、演出家も生徒も古典に触れることはスキルの幅を広げることになると思うのでどんどん上演してほしい。
まぁ私が定期的に観たいだけなんですけど笑
コロナウィルスの感染拡大が心配される中で、宝塚も客席降りでのハイタッチは禁止するなどの対策を講じていました。
劇場も多くの人が集まる場所なので、何事もないまま事態が収束していってほしいなと願うばかりです。
コメント
コメント一覧 (2件)
はじめまして、砂山さん。ヅカファン(ペンネーム)と申します。
この記事を非常に興味深く拝読させて頂きました。
実は、自分は、この公演を最後の三日間毎日観劇予定で比較的良いお席のチケットを入手していたのですが、観劇予定日全ての公演が中止となりまして、非常に残念ながら一回も観ることが出来ませんでした。
率直に言って、今の気持ちは、もし、同じスタッフ・キャストで一年以内に再演がなされて劇場で観ることが出来なかったら、「劇場で一回も見られなかったことを一生後悔し続けるだろう。死んでも死にきれない。」と言った感じです。
そこで砂山さんへ是非お願いしたいことが一点有ります。
主演の珠城りょうさんに関するご感想の最後で「たまきちは、宝塚古典ジャンルあまり強くないのかな、とちょっとだけ思いました。現代劇の方がなんかしっくりくるなぁ」とお書きになられていますが、お忙しい中お手数ですが、出来ましたら、この部分に関しまして更に詳しいご感想をお書き頂けませんでしょうか?
お忙しい中お手数ですが、出来ましたら、ご検討・対応して頂きたくお願いします。
よろしくお願い致します。
*一身上の都合により、メールアドレスは架空のものを記載しました。悪しからず了解して頂きたくお願いします。
ヅカファンさん
コメントありがとうございます^^
公演中止期間のチケットをお持ちだったんですね…!それは悔しい><
珠城さんに関する個人的な考察を少しばかり。
個人的に今まで珠城りょうという役者を拝見してきて、「現代的な」作品が合うなぁと思ったんですよね。内容が現代劇のものもそうだし、演出が現代的なものも然り。
作品で言うと「カンパニー」や「I AM FROM AUSTRIA」などは自然体な演技や身のこなし方が活きて、珠城りょうにピッタリだなと思っていました。
一方古典作品(便宜上当ブログでは昭和時代の名作を古典と呼んでいますが)は立ち方やセリフの抑揚などの表現にある程度の「型」があると思っていて、その型にピッタリはめて演じることによってその作品の良さがさらに引き立つと私は思っています。
「ベルサイユのばら」「風と共に去りぬ」などもそうですが、柴田作品も前者植田演出2作品とは違う型があると思います。
そんな型にはめて演じるものに関しては、珠城りょうの良さがなかなか活かしずらいなぁと思うところがあったんですよね。
「ベルサイユのばら」に出演していた時も然り、あんまりイメージに残ってないんですよね^^;
今回の「赤と黒」に関しては、もちろんジュリアンとしての表現や役作りはとっても魅力的だったし、かっこよかったんですけど、珠城りょう特有のナチュラルさというか、自然体な感じが「古典の型」にしっくり来ていないような気がするという印象を受けたといった感じです。
とはいえジュリアンとしてはしっかり成立していましたし、魅力的でしたので、作品にあっていないというものでもなく、ちょっとした違和感として私の印象に残ったという感じですね。
これをブログの本文に書けばよかったですね…!長くなってすみません^^;