皆さま、ご機嫌いかがですか?砂山(@sunayama373)です。
柴田侑宏先生が旅立たれました。
柴田先生とはもちろん面識はありませんが、私が舞台制作をしていたとき、脚本を書いていたとき、柴田先生の作品にずっと憧れていました。
破綻のないストーリーとか、秀麗なセリフ回しとか、そんな言葉で形容されることが多い柴田先生の作品ですが、私が感じている柴田先生の作品の魅力は
世間体とかを考えると絶対に体験できない、心のやり取りを歌劇を通して疑似的に体感させてくれる作品
だと思っています。
ココに美しいセリフなどがのってくるから気持ちいい。
そんな柴田先生の代表作は数えきれないし決めることなんてできないんだけど、私の心に深く残っている作品をピックアップしていきたいと思います。
柴田作品の代表作が決められない…!
観た作品の印象を一つずつ書き出してみようかなと思ったんですけど、すごい膨大な量になるし、柴田先生の作品を私の陳腐な言葉で1つ1つ解説するのは違うなと思ったので、止めました。
とりあえず、私の心の中に深く残っている柴田作品のタイトルは書かせていただこうかな。。。
- うたかたの恋
- 仮面のロマネスク
- 黒い瞳
- 激情
- 凱旋門
- 花の業平
- 琥珀色の雨に濡れて
- バレンシアの熱い花
改めて見返してみても、やっぱり全てが神作品。
どの作品も再演を重ねているけれど、この中で再演してほしいのは『花の業平』。
全ての作品に言及すると大変なことになるから、花の業平だけ書かせてほしい…!
花の業平 -忍ぶの乱れ-
業平だけは初演に宝塚大劇場・東京宝塚劇場で上演されてから翌年に中日劇場公演があったのみで、ここ10年に再演はされていない。
ガチの宮中物でセットは絢爛豪華、回り舞台、花吹雪、お衣装と全てにおいてめちゃめちゃ予算がかかるだろうから再演できないって制限はあるかもしれないけど、これは今の生徒のキャスティングでも見てみたいなと思う作品ですね。
もちろん初演キャストが神がかっているというのもあるんだけど、今の時代の育ってきた環境が全く異なる生徒さんで表現される花の業平も見てみたい…!
花の業平で一番好きな場面は『芥川』。
入内が決まった藤原高子を在原業平がさらう場面ですね。
銀橋で高子をおんぶして渡る業平のカッコよさ。
さらに、今まで「業平様」と呼んでいた高子が「業平」と呼び捨てになるタイミングが完璧すぎる…!
そら、おんぶ下ろして抱きしめるわ…!
さらに白玉の露の美しさが二人の想いの純度の高さを表現し、影コーラスで悲しい末路の予感と、別離の時の高子の絶叫、業平の慟哭。
すばらしい。
お互いを思いやる気持ちが溢れすぎているあの銀橋の場面は、今の時代の生徒さん全員にやってほしいくらい、男役と娘役の表現の極みだと思う。
柴田作品がなせ琴線に触れるのか
柴田先生の作品って、見てるときにマジで恋しているときの状態に体がなってしまうのがわかる。で、観終わった後にその恋は終わっている。物語と同時にね。
これってすごいことじゃない?
柴田先生の作品で描かれている恋は「大人の恋」と称されることが多いけど、現実で起こるとかなりリスクの高い恋だと思うんですよ。
それこそ、社会的に抹殺されてもおかしくないような恋愛も多い。
そんな、自分では体験できない(しようと思ったらマジで人生を投げうつしかない)恋の物語をしている状態に、観劇中だけトランスできる。そして終演後には、トランスから抜けるから現実社会で抹殺されることはない。
これは最強のカタルシスだと思うんですよね。
いわゆる「こんな恋愛してみたいわ~」って夢見る状態ではなく、上演中は恋してる状態になっているわけだから。
恋愛VRをずっと昔から宝塚の舞台で作ってきていたんですね。
で、しっかり終演後にはトランスから抜けられるってところがありがたい。現実世界で失敗しないで済む。
どの構成やセリフがその効果を働かせているのかはよくわからないんですけどね。
柴田先生の作品は感情移入の箇所が多い
さらに柴田先生の作品は、登場人物に感情移入するポイントが多角的だと感じています。
基本的に、歌劇の観客は女性であることが想定されていて、トップの娘役に感情移入することで、トップスターが演じる男性像に愛されることにカタルシスを感じるわけですけど、
柴田先生の作品は、女性であってもトップスターが演じる役に感情移入する感覚がある。
もちろん、王道通りトップ娘役の演じる人物に感情移入することは往々にしてあるんだけど、
ともすれば無鉄砲に、心のままに、自分の現状を顧みないで、出会った人に一途に恋をする柴田作品の主人公に、グッと感情が寄ってしまうときがあると思うんですよ。
だってさ、結婚を約束した相手もいて、その相手からめちゃめちゃ想われているのに、自分の人生ぶっ壊してしまうかもしれない魅力的な人への想いが止められずに、トランブルー乗って追いかけたり、抱きしめて「このまま遠い所へ逃げましょう」って言ったり、夜部屋に押しかけたり、できないでしょ。現代をいきる私たちには理性が働いちゃうでしょ。
それをしてしまう主人公に、性別を越えてトランスしちゃうんですよね。
「人から想われたい」への憧れと、「人を想いたい」への憧れが両方体感できる。
これ、マジですごいことだと思います。
柴田作品に憧れて脚本書いてた時期もありました。
脚本の勉強をしていた時は、柴田先生のような観客を作品の中の人物にトランスさせるような作品が書きたくて、いっぱい真似して書いてました。
正直パクってました。本当にスミマセンでした!
あ、もちろんお金とってないやつですよ。大学とかに課題で提出するやつね。
卒業論文書くときも、池田文庫行って歌劇の歴史とかを調べないといけないのに、柴田先生の脚本集ばかり読んでいました。(卒業はできました)
「花の業平」が収録されている脚本集めっちゃ読んだな▽
ご病気で失明されてからも、口述で脚本を書き、稽古場では目が見えないにもかかわらず誰がどの立ち位置でどんな芝居をしているかをしっかり感じて的確なダメ出しをされていたというお話を聞いたことがあります。
作品と宝塚への想いの深さですよね。。。
私は結局舞台でのお仕事は続けませんでしたが、柴田先生に憧れて本を書きまくった日々、舞台制作に携わった経験は今も私に息づいていると感じています…!!!
まとめ
今回は、柴田侑宏先生について想いの丈を書かせてもらいました。
柴田先生の作品は、おそらくこれからもずっと宝塚で再演され続けるだろうし、宝塚の古典として演劇史に残っていく作品だと思います。
絶対になくしてはならないと思うんです、宝塚の古典は。
歌劇団には新しいことにもどんどん挑戦して、また新たな歌劇の魅力を発信してほしいと思う一方で、柴田先生の築き上げた歌劇の世界を新しい演出家や生徒に引き継いで、発信していってほしいと思います。
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