皆さま、ご機嫌いかがですか?砂山(@sunayama373)です。
今回は宝塚宙組梅田芸術劇場公演『FLYING SAPA -フライング サパ-』の感想をまとめていきたいと思います。
新型コロナウィルスの影響で2020年4月の赤坂アクトシアター公演が中止となり、振替公演として2020年8月に梅田芸術劇場での上演となりました。
宝塚大劇場や東京宝塚劇場の公演も再開した矢先、劇団内でPCR陽性者が出たことによる公演中止もあり、『FLYING SAPA -フライング サパ-』もどうなることかと思いましたが、『FLYING SAPA -フライング サパ-』出演者は全員PCR陰性だったことで公演は続行。
おそらく千秋楽までいってくれるでしょう…!
とはいえ客席からも陽性反応を出してしまうと、その時点で公演は中止になってしまうでしょうから、ファンも気をつけないといけません…!
さて、本題の『FLYING SAPA -フライング サパ-』の感想について書いていきましょう。
※ネタバレを含みますのでご注意ください。
あらすじから期待しかなかった『FLYING SAPA -フライング サパ-』
演目が発表された時点で期待しかなかったサパ。
作・演出の上田久美子先生が、いつぞやのインタビューでおっしゃっていた「SFをやりたい」がそのまま文章化しているようなあらすじに、久美子先生ファンとしてはワクワクしかなかったんです…!
未来のいつか、水星(ポルンカ)。過去を消された男。記憶を探す女。謎に満ちたクレーター“SAPA(サパ)”。到達すれば望みが叶うという“SAPA”の奥地。夢を追い、あるいは罪に追われてクレーターに侵入する巡礼たち。過去を探す男と女もまた、その場所へ…。
追撃者から逃れて、2112時間続く夜を星空の孤児たちは彷徨する。禁じられた地球の歌を歌いながら──
ポルンカ・過去を消された・記憶を探す・クレーター・巡礼・追撃者・2112時間・星空の孤児たち・・・
なんだこの厨二心をくすぐるキーワードの数々は…!!?
特に気になっていたのが「禁じられた地球の歌」。
好きなやつや…!絶対私の好きなやつ…!
なのでアクトシアター公演をめちゃくちゃ楽しみにしていたので、中止となった時は絶望でした。
が、
箱を変えて上演してくれて本当によかった。
そして、この作品が宝塚歌劇として世に出ることになって本当によかったと心から思う作品となりました!
SFだからこそ人間の苦悩がリアルに突き刺さる
設定を簡単に言ってしまえば『SFもの』ということになります。
地球が資源の枯渇や戦争によってもはや住めなくなってしまい水星に移住するという、現代を生きる私たちにはまだリアルに想像でない環境が舞台上で構成されているわけですが、そこに生きる人間たちの悩みは、まさに今を生きる私たちが社会生活において直面している悩みだったりします。
どんなに近くにいても分かり合えない苦しみ。
家族・恋人・友達、どんなに心通わせたと思っていても根本的な部分は共有できない寂しさ。
みんなが一つになればこの問題からは解放されるのにと望む気持ちと、みんな違ってみんないいと個性を尊重したい気持ち。
アドラー心理学曰く、人間の悩みは全て対人関係から生まれる。
まさに『FLYING SAPA -フライング サパ-』は対人関係から生まれる寂しさのような感情がテーマになっている作品でした。
私たちの日常にもよくある気持ちの動きですが、
SF設定により登場人物たちが極限状態に晒されることでその感情がもっと浮き彫りにされる。
その浮き彫りにされた感情をタカラジェンヌという非現実的な存在によって舞台から発せられることで、観客はよりリアルに受け取ることができると思うんですよね。
今作品は歌もダンスもほぼないし、なんなら「ミュージカル」とも謳われていない作品で、見方によっては【宝塚らしくない作品】と位置付けられるかもしれません。
しかし、私は存在自体が儚いタカラジェンヌが演じる宝塚歌劇だからこそ表現できる非現実の世界観だと思うし、逆に宝塚でないと成立しない作品なんじゃないかと思うわけです。
ブコビッチの寂しさを受け止められるのはミレナしかいなかったんだね
総統01としてポルンカを支配(統制)したブコビッチが一番寂しさを抱えて生きた人物だったことに気がつくと涙が止まらない。
おそらくブコビッチが一番自分の考えを理解してほしいと願っていたのはロパートキンだろう。
家族を失い、科学者としての自分の存在意義を保ち続けるのは相当の気持ちが必要だと思う。
そんな状況の中でロパートキンの陽のエネルギーはブコビッチにとってどれほど心の救いになったか。
敗戦国の人間であるブコビッチがラボに受け入れられたことや、ユーラシア一の科学者であるロパートキンと一緒に働けることで、ブコビッチの自己効力感がどんどん増していっただろうね。
ブコビッチがサーシャやミレナに素数を教えてやったりしている時なんかはめちゃくちゃ幸せそうだし。
きっとブコビッチも新しい星では争いなくこの幸せが続くことを願っていたんだと思う。
みんなが同じ幸せを願っているのに、分かり合えない辛さ・寂しさ・悲しさが行動を狂わせるんだな…。
全ての悩みは対人関係から生まれることもブコビッチはしっかり理解していて、だから自分も最愛の友人を殺してしまうことになってしまった。
故に対人関係を廃するシステムを自分で作り、皆(ミンナ)の意識を一つにしたいと願い、自分にはそれができる技術があるからめちゃくちゃ頑張ったんだよね。
そんなブコビッチがサーシャを殺して、また寂しさのループに入ってしまう前にミレナに救われるっていうのが泣ける。
サーシャも死を受け入れてしまったことで、ブコビッチの再ループ確定してたからな。
ミレナを救ったブコビッチがミレナに救われてやっと幸せを手にしたように感じました。
真風・星風の極限状態をみる
タカラジェンヌにここまでやるかというくらいの極限状態を作り出しているのが真風涼帆と星風まどか。
宝塚は夢の世界・タカラジェンヌは妖精だからあまり生々しい表現は好きじゃないという人もいるかもしれないけど、今作に関してはタカラジェンヌがやるから意味があるよねって思います。
これはもう私が説明するより観てほしい!できれば劇場で。BRでも伝わると思う!
『FLYING SAPA -フライング サパ-』細かな感想をまとめていく
出演者や演出などの細かな感想をざっくりまとめます。
■禁じられた地球の子守唄が染みる。作曲に三宅純さんを迎えて楽曲制作していることが注目ポイントの一つでもある今作品ですが、座付き作曲家である我らが青木朝子先生の子守唄の旋律がめちゃくちゃイイ!
青木先生といえば、大介先生のショーのプロローグのノリのよい音楽から、今作や「神々の土地」の楽曲のような繊細な音を紡がれる先生ですよね。
天才。
■映像演出が巧み!
特に精神状態を表した出演者の体に当たるように投影されている演出の視覚的効果がすごい。グッと人物の精神に引き込まれる感じ。
■真面目な顔してコミカルなことを言ったり、動きをしたりするトップ様面白い。
■愛海ひかる(ロロ)の女役が可愛すぎる!モブの女の子も可愛い!
■ノア先生(芹香斗亜)の「大丈夫だから」はマジで精神科医の鏡。
言われたい。言ってほしい。
■グリープ(若翔りつ)の死に方が心配。頭に血登らない?
ラボにいる時とのギャップがすごい。
■夢白が細すぎて心配
■テウダ(松風輝)とタルコフ(寿つかさ)の関係性が絶妙。
ちょっと引いてるテウダさんにガンガンいく自重しないタルコフが最後の最後でカッコよくなるとかずるい。
■しどりゅー(紫藤りゅう)さん、ようこそ宙組へ。
もともと組子だったかのような馴染み方。スポークスパーソンを完全にものにしていて、元からいる組子だと誰が当てはまるかなーなんて思考の余地を与えないくらいハマっている
自動プログラム感がすごい。
■留依蒔世、安定の暴れん坊将軍。
どれだけ記憶を消されても銃乱射魔になってしまうの最高。
■星風まどかの白タンクトップが最高。
ほっそい腕じゃなくて三頭筋がしっかり発達しているところも最高。
■サイコなもえこ(瑠風輝)良き。
ペレルマンにも自らの思考がしっかり見えるのもよい。
■ロパートキン(星月梨旺)の懐の大きさと、陽のエネルギーがすごい。子供たちがロパートキンのことが大好きになる理由が存在からわかる。
■ズーピン(優希しおん)の番号が実は結構若いところに何かあるなと勘繰ってしまう(30015)
■パンプルムース(春瀬央季)の顔面100万点。
■コーラスの宙組。
いろんな言語が重なり合って響くハーモニーが素晴らしい。
■その中にせとぅー(瀬戸花まり)が日本語で入ってくるインパクトがすごい。
宙娘のリードボーカル枠の系譜を間違いなく辿りつつある。
■GONZOでアニメ化してほしい。
終わりに
今回は宝塚宙組梅田芸術劇場公演『FLYING SAPA -フライング サパ-』の感想をまとめてみました。
設定が明らかにされていない部分や曖昧な部分、描かれていない部分も多くあるものの、出演者が各々で台本にない部分をしっかり補完しているからこそ成立したSFなのかなと感じました。
さらに観客側も自由に補完できる余地もあるので、観終わった後もSAPAの世界にずっと浸っていられてなかなか現実世界に戻ってこれない弊害もあり^^;
間違いなく2020年観てよかった作品ランキング上位に入るだろうな。
東京公演はどうなるか心配ですが、できればこの作品をより多くの方に体感してほしいなと思います…!
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