皆さま、ご機嫌いかがですか?砂山(@sunayama373)です。
今回は月組宝塚大劇場公演『桜嵐記』の感想をまとめていきたいと思います。
なんだかんだでトップ就任以降観劇する機会がとっても多かったたまちゃん(珠城りょう)のラストステージを観ることができて本当に嬉しいです。
しかも作・演出はこれまた大好きな上田久美子先生。
どうしたって期待が高まります。
時代に翻弄されながらも芯を貫いて生きる様は本当にカッコいい…!
ダイジェストをyoutubeより引用↓
南北朝時代って知ってる?
南北朝時代ってぶっちゃけよくわからんのだよな…。
そう思いながら観に行きました。
幕開きすぐに謎の老人が(光月るう組長)客席に「南北朝時代って知ってますか??」って語りかけるんだけど、正直私は南北朝時代に何があったのか全然知らなくてドキッとしてしまいました^^;
心読まれたのかと思った…。
平安とか鎌倉・戦国・江戸あたりに比べると確かに南北朝時代ってパッとしないし何が起こったのかよくわからないし、テレビとかドラマとかでも取り上げられることが少ない様な気がするから、歴史に触れる機会があんまりなかったんですよね。足利尊氏の名前くらいは知ってる程度。
ちなみに「私は世界史とってたから!」と謎の言い訳をしておきます。
でも初めに「ややこしい話わからなくてもいいから武家vs公家の話やでってことが分かってたらOK」的なことを言ってくれるので安心して見始められました。
どうも戦前までは楠木正成・正行親子はめちゃくちゃ英雄視されていて、幕末の志士たちにもかなりの影響を与えた人物みたいだけど、戦後は教科書にすら載らなくなってしまったんですねぇ(覚えてないだけで載ってたのかな?)
「天皇のために玉砕覚悟で戦うことが素晴らしいこと」と言う意味で、戦後は若干タブー感あったんだろうな。
オーソドックスな日本物の中に見える演出家上田久美子のエッセンス
幕開きから桜の花びらが舞う日本物特有の始まり方が好きです。
舞台の上でずっと花びらがひらひらとしていて、悲劇・悲恋に向かっていくその空間を華やかに演出してくれるんですよね。この対比、日本物では結構オーソドックスなやり方と言えると思います。
パンフレットを読むと、上田先生自身、宝塚伝統の日本物を継承していくべく作品作りに取り組まれたとのこと。
型破りな発想力や構成・演出で作品作りに取り組まれている中にも、どこかに必ず「宝塚の伝統」「宝塚歌劇の作品づくり」の基盤を敷いているのが上田久美子先生の作品だなと砂山は感じています。BADDY然りSAPA然り。
『桜嵐記』でも伝統的な「宝塚の日本物作品」作りをめちゃくちゃ感じることができました。
一時は日本物って全然人気がなくて集客もできず上演されること自体減っていたこともあったように思います。やっと日本物が来た!と思ったら、より観客にわかりやすい様に言葉遣いや日本物特有の台詞回し・芝居回しがナチュラルに演出されている、そんな傾向があるなと感じていたんですよ。
かくいう私も学生の頃は日本物の良さがよくわからなくて、日本物ってだけで脚が遠のいていた時もありました。
劇団☆新感線の作品のような、時代劇なんだけどエンターテイメント要素の強い活劇の方が受け入れられやすかったり。(もちろん新感線はめちゃくちゃ面白い)
ただ、やはり「宝塚の日本物」はいわゆる「時代劇」とはちょっと違う、宝塚ならではの表現方法・台詞回し(科白回しというか)・幽玄へのこだわりみたいなものがあると思うんです。
この「宝塚の日本物」の伝統を継承しつつ、上田先生独特の心情表現人海戦術や回想の構成が組み込まれていて
やっぱり宝塚ってすばらしいな
に行きつきました(いつもここに行きつく)。
しかし戦闘中に子供の頃の回想が入るとか、一番最後に出陣式を持ってくるのとか、マジでくーみんずるいわぁ・・・泣いてまうやんそんなん・・・
楠木正行(珠城りょう)と弁内侍(美園さくら)の物語
楠木正行と弁内侍の物語は「吉野拾遺」という室町時代の説話集に載っているのだとか。
お話的には北朝の武将でめちゃくちゃ強いが女遊びが酷い高師直に呼び寄せられた弁内侍の輿を楠木正行が救ったことで、後村上天皇に「結婚したらどうや?」と言われたが、正行は「自分は武士なので…(いつ死ぬともわからない身なので)」と断ったということですね。
「吉野拾遺」にどこまで書き込まれているのかわからないですが、『桜嵐記』では弁内侍を救って吉野へ向かう道中での炊き出しの様子や、正行の方言萌えくだりがあり、すごく自然に心の交流が描かれている印象でした。
超絶真面目武人の正行も珠城りょうのイメージにピッタリだし、ズキュンと恋に落ちるというよりはクスクス笑っているうちにだんだん好きになっていく弁内侍も美園さくらにピッタリ。
大恋愛と言うよりも丁寧に育まれた想いがたまさくコンビのラストにスッとマッチして清らかで美しかったですな。
伝統的な演出の中に織り交ぜられる、上田先生のユーモアセンスで書かれる場面にはなんだかほっこり。
弁内侍のことを「内侍さん」と呼ぶ正行に河内の人の人情みたいなものも感じたり。
大阪の人は神様も「さん付け」で呼んだりするよね。(てんまさん・いくたまさん・ビリケンさん…楠公さん(楠木正成)もそうだね)
(コメントにてご指摘いただきましたが、「さん呼び」はしておらず、私の聞き違いの様でした^^;)
一人だけ終始河内弁を話す末弟・楠木正儀(月城かなと)がとってもよいアクセントになってました。
一見チャラくてやんちゃな末弟だけど、最終的には国を背負い南北朝合一のキーパーソンとなる風格を匂わせる(そこまで描いていないけど)。
次期トップとなる立場にも重なりますね…。
河内弁なのに日本物の台詞回しが違和感なくできるって、流石雪組育ちって感じがします。
楠木正時(鳳月杏)と百合(海乃美月)の物語
楠木正時と百合のもう一つのロマンスも泣ける。
正時が戦いから帰ってきた時、子どもたちや母上もいるのに完全に「二人の世界」になるところなどは、超ベタ。
ちょっと笑ってしまうくらいベタな「二人の世界」になるんだけど、その世界が深ければ深いほど、別れが悲しくなる。
「約束してくれ、この先何があっても生きると」と言う正時の台詞が2重フラグみたいになってて、巧妙…!
泣きそうで泣かない状態をキープしたまま物語が進んでいくんだけど、正時・百合の別離イベント発生してからもう涙腺崩壊して涙止まらなくなりました…。
コレ多分2回目見ることができたら、正時が帰ってきた瞬間に泣いてしまいそう…。
この泣きそうで泣かない時間が胸が苦しくなって喉の奥がひりひりするよね…久美子のオモウツボ!
後村上天皇(暁千星)の描き方もすごくよかった。
後村上天皇が優しければ優しいほどこの物語は切なくなる。そんな感じもしました。
本当は民のために祈りをささげる天子の務めを全うしたいと思いつつも、先帝・後醍醐天皇(一樹千尋)の怨念にとらわれ戦争を止めることができない心優しい人。
先帝が怖すぎるのよ、ほんと…。
公家のために武家が働くのは当然のことだという周りの大人たちの中にいて、自分のために働いてくれている人にちゃんと報いたい気持ちのある人。正行に褒美を取らせたいし、猿楽の子たちにはお礼にご飯を用意してくれる。
こんな人が社長だったら社員はついていくよな…。
だからこそ正行も最後まで天皇のために忠義を尽くしていたのだと説得力もありました。
先帝や楠木正成などの怨念ターンの中心で小さくなる後村上天皇とその肩をささえる正行がいるんだけど、その二人の佇まいから信頼関係みたいなものが見えたような気がしました。
後村上天皇も正行も、周りの大人たちに比べるとかなり若いんだよね、きっと。正行は23歳くらいでしょ。その年齢で国背負ってるって半端ないよな。。。
決死の覚悟で四条畷に向かう正行に言う「帰れよ」が思いやりに溢れすぎてて、たとえ四条畷で負けてもその後南北朝合一した後は正当な天皇になって、天子の仕事をしてほしいと願わずにはおれんかった…!
紫門ゆりやが見つからない…!
白状すると桜嵐記で紫門ゆりやさんを見つけられませんでした。
— 砂山🎩ヅカライフブログ (@sunayama373) May 29, 2021
あれ?ゆりちゃんなんで出てないの??は?高師直??あのゲスいおじさん???いやいやいやいや、ゆりちゃんなわけないよゲスすぎるもん。パンフの役名間違ってるよね???いやいやいやいや。は???#混乱している
ゆりちゃん(紫門ゆりや)がマジでわからなかったんですよ…!
え?女役やったんかな?だからわからんかったんかな??と思うくらいめっちゃ探しました。
ずっと出てたと知ったときの衝撃よ…。
だいたい月組で「悪いおじさん」と言えば光月るう組長か輝月ゆうまと相場が決まっていたのに、お二人とも別の役で出てるしおかしいなと思ってたんですよ…!
ゆりちゃんと言えば誰が言ったか「91期ロイヤル王子の一人」。ゆるふわさわやか系男子。最近はおじさん役も板についてきて専科異動後の活躍も大いに期待な方。
組子最後の公演でここまで新たな一面を見せつけてくるとは…!
そういえば上田久美子作品『BADDY』の時、ゆりちゃんは「ホット」という通し役だったことを思い出しました。その時も、「イメージ的にはクールじゃね?」って思ったんですよ。
お顔立ちがスッとしてるスッ族の方だもんな。
でも蓋を開けてみればホットさんがめっちゃ似合ってて…!
少女漫画に出てくる運動部のイケメン・火属性のやんちゃ系男子のような魅力があったんです。
上田先生はゆりちゃんの固定されたイメージから少し離れた魅力をがんがん引き出してくるなぁ。
かなり信頼を寄せられているんじゃないかと思いました。
ますます専科異動後の活躍が楽しみですね…!
おわりに
今回は月組宝塚大劇場公演『桜嵐記』の感想をまとめました、が、なんだか書いているうちに話があっちこっち行ってしまって…読みにくかったらすみません><
もう一回観たい…何とかしてもう一回観たいですね…。
お衣装もめちゃめちゃ素敵でしたね…羽のモチーフのやつとか。。。
上田先生は吉野に観光に行った際に立て看板の案内を見てこの物語を想い始めたのだとか。
立て看板立てた人に国民栄誉賞あげたい。
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