皆さま、ご機嫌いかがですか?砂山(@sunayama373)です。
今回は花組梅田芸術劇場メインホール公演『二人だけの戦場』を観劇しましたので、感想をまとめておきます。
高校生の頃、VHSで死ぬほど見た作品で、再演が決まってからずっと楽しみにしておりました…!
今回の記事は、初演は見ておりますが、再演のナウオン・歌劇・グラフなどは見ていない状態で書いています。(ナウオンは録画予約したんだけど、HDDの容量がいっぱいでとれてなかった…!)
憧れの『二人だけの戦場』
中学生の時に宝塚にハマった私にとって、友達が供給してくれるBSやWOWOWの録画ビデオはマジで貴重なものでした。
劇場までは遠かったし、電車とか一人で乗ったことなかったしね。
その友達が供給してくれたビデオの中に94年雪組公演『二人だけの戦場』がありました。
砂山は昔から宝塚の会話劇がとっても好きなので、一回再生しただけでドハマりしましたね。
当時はバウ公演も実況CDが出ていることを知り、ビデオデッキとラジカセを3色コードの黄色でつないでカセットに録音して、実況CDならぬ実況カセットを自作して、受験勉強の時にずっと聞いてました。
英単語を覚えずに台詞をめっちゃ覚えたので、志望校は落ちました…!
こんな物語を書きたい
こんな歌詞が書きたい
こんなお芝居作りたい
と思ってましたね。つまり憧れ。
そんな作品を生で見ることができる日が来ると思ってなかったので、再演されると聞いた時は飛び上がりました…!
個人的には再演にはポジティブ派です。
宝塚の作品で初演を観ていて、再演を観たときにガッカリしたことないんですよね。
宝塚以外の作品でガッカリしたことはあるんですけど、宝塚に関してはいつも「再演もいい…!」という感想に行きつくのでめちゃ信頼度高いです。
なので、今回も超期待値高かったです。
バウホールから梅田芸術劇場へ
始まる前から気になっていたのは、箱の大きさ。
初演は宝塚バウホールで上演されていた作品だったので、再演が梅田劇術劇場メインホールと聞いて、正直
デカすぎん???
と思いました。
幕が開いて平場に明かりがつくとやっぱりちょっと大きいなぁとは思いましたが、話が進むにつれて気にならなくなりました。
たぶん、美術でアクティングエリアを囲んでいるからだと思います。
初演の時もそうでしたが、今回の舞台は上手下手に検事・弁護人の、舞台奥に被告人の証言台が常にあり、舞台を囲むように背の高い舞台美術が配置されています。
物語が裁判で話されている内容なのだとわかるようにもなっているし、場所自体の閉鎖性も表現されているような空間作り。
劇場自体のタッパも間口も大きいけど、すごく狭く感じるような作りになっているなと。
すごく演劇的で好きな空間でした。
架空の国の独立運動
初演の映像を見ていた当時、私は高校生くらいで、世界情勢などてんで理解していませんでした。
何となくニュースから「ユーゴスラビア」とか「ボスニアヘルツェゴビナ」とか聞こえてくるなくらいの認識。
当時は世界史の教科書も「冷戦」で終わってましたしね。
なので初演の映像を見ていた時は「ルコスタ」が実在する自治州だと思って、めっちゃネットで調べた記憶があります。(「二人だけの戦場」について書かれたホームページビルダーで使ったページしか出てこなかった)
今回パンフレットの正塚晴彦先生の文章を読んで、初めて実際の紛争がモデルになっているんだなと知りました。
連邦軍や自治州の設定を全部ゼロから考えて物語に落とし込んでいるんですねぇ…。すご。
ガンダムとかマクロスの世界を考える並みのことが宝塚で行われているのか…!
軍の号令、マジで何語か分からんのですけど、正塚先生が考えたんですかね。
言語まで考えるとか、マクロスやん。ヤックデカルチャー!
ユーゴスラビア紛争を「二人だけの戦場」に照らし合わせた解説がこちらの評論本に載ってました。なかなか興味深いところであります。
図書館とかにもあるかも。
この本、結構前に買ってたのにな。
読んでなかったのか読んだけど頭に入ってこなかったのか…。
出演者の話
さて、今回は柚香光・星風まどかトップコンビ率いる花組で上演とのことで、出演者に関しても期待大でした!
最近花組さんはよく見ているので嬉しかったです。
どうしても初演の配役と比較してみてしまいがちだけど、どっちが優れていてどっちが劣っているとかは、砂山としては「ない」ですね。
どちらも素晴らしいです。ほんとに。
柚香光のティエリー・シンクレア
れいちゃん(柚香)のシンクレアは94年当時なかった言葉で言うと「意識高い系」。
理想と目標が高く意欲的でめちゃめちゃキラキラしている…!
前の会社にいた新卒の男の子を思い出しました。
前半がキラキラしていればしているほど、後半に効いてくるんですよね…。
敢えて比較すると、初演・一路真輝さんのシンクレアは新任士官だけどどこか落ち着いていて正義感の強い仕事の出来るエリート感があり、れいちゃんは活発的で頭のいい陽キャなエリート士官殿。
上官殺害という事件を起こしてしまうんだけど、この射撃のアプローチも二者二様で、
(これは私のイメージだけど)
初演の一路さんは、優等生のエリート士官が咄嗟の判断で上官を撃ち殺した感があったけど、
再演れいちゃんの場合、普段はやんちゃキャラなあいつが、いざその時になると訓練で習ったフォームをしっかりきっちり忠実に守り上官を撃ち殺した感があって、
だからこそその後の表現がお二人とも違うアプローチになるんだろうなぁと思ったりしました。
(初演は絶叫・再演は過呼吸)
どっちのシンクレアもめちゃ説得力ある。
一瞬無表情に見えるシンクレアの時は、特殊マスク使ってるんですね。
幕開きの中年シンクレアとか証言台に立ってる時とか。
正塚先生作品では宙組全国ツアー『バロンの末裔』でも特殊マスクで双子を表現していたけど、今回も同じスタッフさんなのかな??
ちょっとびっくりしますね
星風まどかのライラ
ライラ、めっちゃ可愛いよな…。
花總まりさんのライラもめっちゃ可愛かったけどさ、、、まどか姫のライラも最高だったよ(語彙力)
宝塚の娘役キャラでライラ一番好きかも
※一番信用ならないのが砂山の「一番好き」説ある。
※「一番好き」が多すぎる。
シンクレアと出会い、少し緊張感を持ちながら意識的にフラットに接しようとしているところから、どんどん会話が弾むようになって、恋に落ち、恋人にしか見せない行動や表情を見せる様になる流れがホントにスムーズで、星風まどかの表現の引き出しの多さにいつもながら感銘を受ける次第であります。
まどかさん、人生何週目なん??
ライラの女心を表現する台詞も素晴らしすぎるんよな。
気持ちが高まり過ぎて相手が見られなくなってうずくまるとか、初めて名前を呼ぶ時の感じとか。
花總さんも素晴らしかったけど、星風まどかもめちゃめちゃ素晴らしかったし、2人のライラのアプローチに統一感があったのも正塚先生の演出力だよなぁと思うんですよ。
役者に任せきってない、世界観を作り出すための演技に対する演出というか。
つまり、正塚先生がライラなんや。
永久輝せあのクリフォード
ひとこちゃん(永久輝)のクリフォードはちょっと堅物そうに見えて、シンクレアをライバル視しているようで、けど実際は大切な友達だと思っているめっちゃいい奴。
ちょっと陽キャ感のあるシンクレアと、陰キャまではいかないけど真面目君クリフォードの対比が絶妙なバランスでした。
士官学校時代から「なる様にしてきた」二人の、セリフやエピソードでは描かれていないバディ感が出ているのも各役者と演出家の相乗効果の賜物だと感じます。
裁判中の語尾「~~ます↑」がちょっと気になったけど、これは特段癖というわけではないらしい(ひとこファン談)
弁論であることを意識されてそうなったのかな。
祭りの中で熱烈なキスをする軍曹(羽立光来)とエルサ(朝葉ことの)をガン見したり、エルサの店での大乱闘でコミカルな面もあり、改めてクリフォードはとっても美味しい役だなと思う次第であります。
ハウザー大佐とクェイド少佐の戦場
司令官としてのハウザー大佐(凛城きら)に対して、考え方が違うとわかりつつも部下としてしっかり仕事をこなし、軍の役に立ちたいと思っている副官としてのクェイド少佐(航琉ひびき)。
「二人だけの戦場」はこの二人の「戦場」でもあると思うんですよね。
国を守ることの戦場という意味もあるし、司令官・副官それぞれの信念がぶつかり合う司令官室も戦場である。
クェイド少佐だって悪者じゃあないんですよね。国のために必死に働いているし、自分自身の考えをしっかり持っている。
大佐は大佐で、自分に一番近い部下が自分と違う意見を持っていることをちゃんと理解しながら、自分の意見をどうやったら副官は理解してくれるか、副官を尊重しつつ自分の信念を曲げないで軍をうまく回すためにはどうすればいいかを常に考えている人だと思うんですよ。
芝居で表現するにはめちゃくちゃ難しいだろうなと思うこの関係性を、りんきら先生(凛城きら)ハウザーときょんさん(航琉ひびき)クェイドが絶妙に表現してくれたと思わざるを得ません。
発する芝居だけでなく、内面的な感情を表現する身体の緩急、視線、呼吸などが矛盾なく成立するからこそ、あの司令官室の空気が生まれるんだなと思います。
いやー芝居って面白いね。
つか、役者ってすごいよね。
シュトロゼックとハウザー大佐の戦場
ルコスタ自治州議長のシュトロゼック(高翔みず希)とハウザー大佐も、本来は対立する立場ではあるけど、テロをなくし無駄な犠牲を増やすことは避けたいという想いの元、同じ戦場で戦う二人のように思います。
けど、実際には言葉の裏に駆け引きがあったり、お互いに言えない事情などもありつつ、それでも何とかうまくやっていく方法はないかと模索するという、これもセリフだけでは表現できない空気感のぶつかり合いな気がします。
最後の最後でシュトロゼックとハウザーが感情をぶつけ合うところは、泣いてしまいました。
なんでこんなに頑張ってくれてるのにうまくいかんのやろか…と。
最後にこの二人で泣けるってことは、それまでのお芝居が、セリフだけでない二人の関係性がこちらに浸透しているからであると、思わざるを得ません。
シンクレアとノヴァロの戦場
ノヴァロ役にあかさん(綺城ひか理)、花組カムバックですね。
この二人の戦場でもあるよな。
ノヴァロだって、劇中ではちょっとコワイ「カタキヤク」のようなポジションだけど、若いころからずっと軍にいて叩き上げられてきた人なんだろうと思うのですよ。
軍人としての誇りやプライドもしっかりあるんだろうし。
すっごい高圧的で反抗的な感じするけど、敬礼や挨拶はきっちりするから、ホントに軍人としていろんなことを叩きこまれてきたんだろうなと言うことがわかる。
それを学校出たてで自分より上の階級ついた奴にあーだこーだ言われると、腹も立ちますわな。。。
物語には描かれていないけど、クェイド少佐とは意見が合ってホントに信頼していたと思うんですよね。
だから最後にシュトロゼック邸についてきただろうし、副官が射殺された後の怒りが尋常じゃない。
すぐにでもシンクレアを殺してもおかしくなかったけど、司令官の指示に体が止まるのは軍人としてしみ込んできたものだろう。
ノヴァロも、しんどかったろうな…。
アルヴァとライラの戦場
アルヴァ(希波 らいと)・ライラの兄妹も常に戦っている。
州内部の過激派に命狙われたり、旅に出れば人種による差別を受けたり、独立への意識は高いから連邦政府と戦う父・シュトロゼックを支えたり。
アルヴァの出番は少ないし、出てくるたびにプリプリ怒ってるからなかなか人物像掴みにくいけど、テロリストから足を洗って父のサポートをする中で、ライラ同様フラットにも物事を見られるようになった人なんだろうなと希波くんの作り上げたアルヴァを見て思ったのであります。
「思い知るがいい!」なんて歌うから、過激派の名残はめっちゃ感じるけどな…!
まだまだある「二人」だけの「戦場」
初演の映像を見ていた時はここまで考えが及ばなかったけど、物語の中には様々な「二人だけの戦場」があるんだなと、今回の再演で気づきました。
上記以外にも
- ラシュモア軍曹とエルサの戦場
- 検事と弁護人の戦場
- 作家とシンクレアの戦場
もあるなと。
軍曹とエルサも自分たちの信念を貫いて愛し合っているし、愛し合うことでこの戦場を二人で生き抜くことを「自分たちで」決めたんだろう。
内戦が始まって各地でいろんな形の「シンクレアとライラ」がいただろうって、モノローグでも語られているけど、どんな状況であっても人と人とか心を通わせ合って愛し合うことはあり得ることだし、二人で戦いながら生き抜いていくんだなって。
現代社会も同じやんな。
しかし朝葉ことのちゃん、すごいね。
上級生の娘役さんかと思ってたら、星風まどかよりも下級生じゃないか…!
にしてあの娘役としての包容力…!素晴らしい。
検事(峰果とわ)と弁護人はまさに法廷が戦場。
検事は弁論のシーンしかなく物語上人間味が少ないけど、検事としての信念に基づき、被告人を有罪にするべく戦っているし、弁護人は被告人の友人で気持ちが昂るときもあるけど必死に戦っている。まさに法廷バトル。
作家(高峰潤)とシンクレアもある意味戦場だと思うんですよ。
作家はシンクレアから何を引き出せるかによって、自分の作品のクオリティが左右されるし、シンクレアは「つらく虚しい戦い」をどのように伝えるか、そこに置いてきた自分の気持ちとどう向き合うのかって戦いがあるし。
どこもかしこも戦場なんやな、この作品は。。。
みんなで上手くやれたフィナーレに泣く
フィナーレの構成は初演時とほぼ同じだったと思います。
初演時もそうだったけど、この作品のフィナーレは、登場人物がそのまま出てきているような感覚がしてとても好きです。
アニメの最終回のエンディングがいつものエンディングじゃなく、スタッフロールの後ろで物語のその後やパラレルを描いているような、あの特別感のあるエンディングを見ている感覚。
所謂「パレード」的な顔見世がなく、カーテンコールに向けて登場人物が舞台に集まってくるんだけど、その時のみんなが最高にいい笑顔で泣く。
司令官と副官も笑い合ってるし、ノヴァロとクリフォードも年相応にふざけ合ったり、シュトロゼックは椅子に座らせてもらったり。
「みんなで上手くやれた」らこんな世界になるんだというのが一番最後に表現されてて、ココで最強に泣いてしまうのであります。
みんなで同じ方向に向かって敬礼するの。ほんとに感動する。
おわりに
今回は花組梅田芸術劇場メインホール公演『二人だけの戦場』の感想をまとめました。
みんながそれぞれの戦場で、それぞれの想いを抱えて生きていく姿、まさにヒューマンドラマでした。
私が宝塚の芝居で好きなのは「非日常の中に感じる日常性」なんです。
舞台や設定、登場人物は非現実でも、そこに息づく人間の心・感情は今を生きる私たちにも共通することがあって、どうしたって気持ちを揺さぶられる。
そんな宝塚歌劇が好きなんです。
それが役者の力と脚本の力と演出の力がドンピシャに合わさってくると、今回みたいに「自分がその場に生きていたような感覚」になるんですよね。
夢みたいなもんです。寝てる時に見る方の夢。
終演後、目が覚めて、「わああああ」ってなる。
そんな宝塚歌劇を今後ももっと観たい。
正塚作品はもちろんですが、若手作家の作品でもそんな感覚になる作品が生まれてくることを期待してやまないのであります。
コメント
コメント一覧 (3件)
1回目は劇場、2回目は配信で観ました。
今回が初めてだったので、今の時代にあえてこれをやるか、と思うぐらい生々しく刺さりました。
花組は特に華やかでキラキラしているというイメージでしたが、それとは真逆で泥くさく、鼓動の音まで聞こえるのでは?と思うぐらいリアルで素晴らしかいお芝居でした。
Marikoさん、コメントありがとうございます!
鼓動の音まで…ホントにそうですね。
いつもは華やかな舞台を見せてくれる宝塚がリアルな人間を描くというのも大好きです…!
素晴らしいお芝居でした。
素敵な感想ですね
放送や円盤等では観る根気が無いのですが
再演だとプロローグからフィナーレまで観ることができます。1994年雪組版を観た時の記憶が甦って面白かったです(作家の高峰潤さんが使用していたテレコは初演時と同じものかも)